3月22日の夜、六本木の路地裏にあるラウンジスペースBLINKでCPDSフォーラムを開催しました。先週に続き今回も、都市計画家で多摩大学大学院客員教授の中分毅さんのフォーラム。「プロジェクト・マネジメントからプロジェクト・デザインへ」と題し、PMの役割の変化について2回にわたりお話し頂きました。
後編となる今回は、中分氏が日建設計で手掛けられた代表的な大規模都市開発プロジェクトの紹介。一つ目はバスタ新宿を含む新宿駅南口基盤整備。老朽化した跨線橋の架替を機に、交通が輻輳する新宿駅南口の混雑を解決することや分散していた長距離バス発着所を集約することを目的に、高速バス・タクシーの乗降場や歩行者空間など鉄道施設を一体的に整備する基盤整備事業を実施。鉄道上空で深夜の時間帯に施工。10年以上の工期を掛けて、バスタ新宿を整備するとともに、鉄道上空の容積率を移転して超高層複合施設・ミライア新宿を整備。さらには新宿区の要望を受けて新宿駅東西自由通路も北側に整備しました。
ふたつ目に紹介されたのが、明治屋ビルの保存活用を含む都市再生特区を活用した市街地再開発事業。こちらも10年以上の歳月をかけて事業をやり遂げ、2016年11月に京橋エドグランとして開業。30名を超える地権者を取りまとめ、国・都・区といった異なる自治体、警察・消防やメトロとの協議も含め多様なステイクホルダーの利害を調整しながら完成にこぎつけたプロジェクトです。元々の区道の位置に街区を貫通するパブリックスペースを設けたことで隣接地との連続した動線を確保し、周辺街区との繋がりを重視することで新たな価値を提案しました。本プロジェクトにおける駅との接続や地下空間整備の考え方は中央区のまちづくりガイドラインに組み込まれ、後続計画へのモデルとなっています。
ワークプレイス改革の事例紹介の後、2回のフォーラムのまとめとして、「容器と中身の両面で考える」と題しプロジェクト・デザインにとって有効な視点を紹介。プロジェクト・デザインを受け止める容器として、実施の意思決定段階における「戦略ブリーフ」と基本方針策定時の「プロジェクト・ブリーフ」の2つを提示されました。中身については、ステイクホルダー間の相互理解が成立していない前提で、安易な共感に持ち込むのではなくPerspective Taking=視点取得に持ち込むという指摘は深く頷けるものでした。「プロジェクトは誤解の海である」という格言に続けて「プロジェクト・マネージャーはステイクホルダー間の壁を跨ぐ境界連結者である」というまとめでレクチャーは終わりました。
参加者は11名、予定の時間があっという間に過ぎた濃密なフォーラムでした。中分さん、2週にわたり貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。ご参加頂いた皆さん、新年度のCPDSフォーラムにもぜひお越しください。