2022年度に続き、一般社団法人CAMPs代表理事・多摩大学大学院客員教授の中分毅様にご登壇頂きフォーラムを開催しました。タイトルは「プロジェクト・デザインへの挑戦」。
日建設計時代に都市開発部門を率いられ、多数のプロジェクトを手掛けてきたご経験を基に独自の理論を展開。プロジェクトの初期段階におけるフレームの構築=プロジェクト・デザインの重要性を語って頂きました。
まずは世の中のプロジェクトの多くがなぜうまくいかないのか、その理由を内外の調査事例を用いて分析。ビジネスの世界ではオペレーションの比重が年々低くなり、プロジェクトの比重が高まっています。それでも未だにプロジェクトの失敗率が高止まりしている主要な原因は、目的系にあると指摘。①組織における優先順位の変化、②プロジェクトの目標の変更、③正確さを欠く要求事項の抽出がプロジェクト失敗の原因の上位を占めます。
初動期に曖昧さがつきもののプロジェクトですが、アメリカのPMBOKなどではプロジェクトのミッションが定義されたあとのこれを実行する段階のみにプロジェクト・マネジメントの領域が限定されています。ミッションの基となる「構想」がよく練られないままにプロジェクトが開始され、成果が支持されず価値が創出されない。構想と価値をプロジェクト・マネジメントが十分に扱えていないことがうまくいかない要因であると分析されました。
プロジェクトを首尾よく進めるため、初期段階で重要となるのがフレームの構築=プロジェクト・デザインです。良い構想を練り、複数主体の連携を成立させることでプロジェクトのフレームを形成し、課題認識・ビジョンそして行動をチームメンバーに共有させます。初期段階では主体間で不協和音が生じることが多く、それを乗り越えるためにも各主体のレベルとそれらを包括しうる上位レベルの二層構造でプロジェクト・フレームを捉えることが重要だと説きます。
ケース分析では「世田谷Qs」プロジェクトを紹介。第一生命が所有する低利用地を巡り、初めは社内各部門の利害が対立し、妥協案も面白みのない推進力を欠くものでしたが、お互いの立場を理解し、不動産部門が止揚案を呼びかけたことで共通上位目標である「ウェルネス」というゴールを設定。外部のステイクホルダーを巻き込み借地方式を導入することで土地を所有したまま地域にも貢献できるウェルビーイングなまちづくりとなり成功をおさめました。
初動期のプロジェクト・デザインを丁寧に行い、適切なプロジェクト・フレームを設定することで多数のステイクホルダーの利害を乗り越えた包括的な共通上位目標が創発されます。問題を抽出するためには内部からの視点・外部からの視点・外部への視点という3つの視点が必要であることなど、大変示唆に富んだ講演をして頂きました。講師の中分様、参加頂いた皆様、どうもありがとうございました。