芝浦工大建築学部の志手一哉教授とCPDSの合同で企画する大学院向けの講義「建築生産マネジメント特論」が開講しました。4週連続8コマに渡り、書籍『現代の建築プロジェクト・マネジメント』をテキストに使用し、書籍執筆や委員会での議論に参加したCPDSのメンバーがリレー形式で登壇、実務に裏付けられた建築プロジェクト・マネジメントのツボを講義します。
第3回となる10月10日は「建築プロジェクトの発注契約」をテーマに、大手ゼネコン2社の中堅実務担当者による授業の模様をレポートします。
1コマ目の講義は「建設産業の多面的考察」と題して、前田建設工業の持ち株会社であるインフロニア・ホールディングスの綿鍋宏和氏が講師を務めました。綿鍋氏はCPDS立ち上げ初期から事務局運営に携わり、書籍のベースとなった委員会活動にも多大な貢献を頂きました。経済学部の出身で、現在は経営監査部長を務めています。
会社の価値を測るものさし=時価総額の考え方、建設工事の式典、公共建築事業の発注フローにおける予定価格について、コストプラスフィー・オープンブック方式そして前田建設のDX戦略について多面的に話されました。「脱請負」を掲げる前田建設らしく「コンストラクション・サービス」という言葉を提示して、建設業は本質的に非製造業であり、サービス業であるとの見方を提示しました。
講義の最後に「創造的破壊」で有名な経済学者シュムペーターの言葉「イノベーションのイニシアティブは生産の側にある。」を引用し、ものづくりの仕事の醍醐味を学生に向けて伝えていました。
2コマ目は「透明性確保と発注者支援型CM」。書籍『現代の建築プロジェクト・マネジメント』を志手先生と一緒に執筆した小菅健氏が講師です。小菅氏は生体医工学から建築に転向した異色のキャリアを持つ方で、竹中工務店ではCM部門に所属しています。
建設コストの「適正価格」の納得感をどう得るか?パソコン購入を例にとって、①価格の比較は選定=プロセスの透明化、②積み上げは実費精算契約=コストの透明化に繋がるとわかりやすく解説。とは言え、パソコン購入のように単純ではないので、③発注者支援型CMのような手法が求められると多様な発注方式に話を繋げます。
選定については設計者・施工者それぞれの選定方式があり、適切な選定方式を選択することは発注者の責務であること、また実費精算契約については、これまで日本で定着してきた総価請負契約とはまったく異なるビジネスモデルであり、発注者・受注者共に意識の変革が必要であることを強調しました。
また、CPDSの普及啓発委員会で議論した発注者支援者としてのPM/CMにも触れ、日本の建築生産方式にあわせて独自の変化をしてきた経緯、CMという言葉の意味合いも時代と共に変化してきたことを指摘しました。
お二人の講義は、確かな実務経験に基づいた大変説得力のある内容で、大学院生にとって貴重な経験になったかと思います。綿鍋様、小菅様ありがとうございました。来週10/17は最終回となる講義の模様をレポートします。お楽しみに。