フォーラム・セミナー

芝浦工大大学院で『現代の建築プロジェクト・マネジメント』を教科書にした講義の第2回が開催されました

芝浦工大建築学部の志手一哉教授とCPDSの合同で企画する大学院向けの講義「建築生産マネジメント特論」が開講しました。4週連続8コマに渡り、書籍『現代の建築プロジェクト・マネジメント』をテキストに使用し、書籍執筆や委員会での議論に参加したCPDSのメンバーがリレー形式で登壇、実務に裏付けられた建築プロジェクト・マネジメントのツボを講義します。

第2回となる10月3日は「コストマネジメント」をテーマに、大手デベロッパーの発注担当者と建築コンサルタントによる授業の模様をレポートします。

芝浦工大校舎と秋桜
講義の模様

1コマ目の講義は「事業構想を評価する事業予算の計画」。書籍の第3章に該当する内容です。講師は森トラスト株式会社発注部の山田晋治氏。土地と会社以外、すべてのものの購入を決める部署に務めています。大手デベロッパーが事業をやるか/やらないかをどのように判断しているのか、実務担当者による貴重な講義でした。

ステップとしては、まず企画設計を行い、何をつくるのかざっくりと決めます。次に費用と収入の想定を行い、費用対効果を算出して投資判断を行います。最後に、統一規格に適合していることを確認し、事業化を決定します。

企画設計では敷地概要・法的規制・社内基準等をまずは確認し、建築の企画を行います。費用と収入の想定は、それぞれの項目を紹介。費用対効果の算出では投資判断に用いる様々な指標を紹介しました。ステップごとに詳細な実務の内容を分かりやすく解説し、節目節目で学生に問いかけながら、対話型でていねいに講義を進められました。

山田晋治氏
小長谷哲史氏

2コマ目は「建築コストのプランニング」。建設ポータルサイト「アーキブック」を主宰する小長谷哲史氏が講師です。小長谷氏には書籍『現代の建築プロジェクト・マネジメント』編集と事例記事執筆でも関わって頂きました。

コストコンサルタント出身の小長谷氏による「建築費騰落メカニズム」の解説は豊富なデータに裏付けられた説得力あふれるものでした。日本はこれまで3回の建設費高騰を経験しましたが、それぞれ背景と現象が異なります。最初は昭和の終わりのバブル期、建設需要と労働市場のギャップが原因でした。2度目がリーマンショックで終わりを告げた中国の建設バブル:主に鋼材価格がアップしました。そして最後が東日本大震災からの復興需要、主に労務費がアップしていますが、現在まで続いています。

この10年で建設費は約3割アップしましたが、現在もウッドショックやウクライナ戦争の影響で建設資材価格が大幅アップしています。輸入に頼る日本は円安の影響も追い討ちをかけ、今後もコストの上昇が予測されるとのこと。では、建設費の超高騰を回避するにはどうすればよいのか。発注契約方式の見直しと、省力化に向けた設計・工法の採用を処方箋として挙げています。

お二人の講義は、これから社会に出る大学院生にとって、とても刺激に富んだものだったのではないかと思います。山田様、小長谷様ありがとうございました。来週は10/10、第3回の講義の模様をレポートします。祝日でも大学の授業はあるのです。

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