フォーラム・セミナー

第4回CPDSフォーラム“アフターコロナ&AI-DX時代の「生き方~働き方」”を開催しました

7月30日、4回目となるCPDSフォーラムをオンラインで開催しました。スピーカーは学校法人大妻学院顧問でCPDS代表理事の花村邦昭氏。テーマは“アフターコロナ&AI-DX時代の「生き方~働き方」”。講演概要と質疑応答について、以下にレポートします。

<講演概要>

今回のコロナ騒動でわれわれが学習したことは<「公共」とは何か>についてです。つまり、<人間は独りで生きているのではない、公共生活者同士として緊密に結ばれ合って生きている>ことの再確認です。アフターコロナ&AI-DX時代は互いが「公人」同士として「共生」し合う時代です。そこでは、各人はそれを担うに足る「自己」でなくてはなりません。

人間はもともと公共的な存在ですが、アフターコロナ&AI-DX時代では、「自己」の「公共性」がますます強まります。みなが「対等・平等」な立場で、「公」と「共」の間をバランスよく生きていくことが求められ、自由に結ばれ合った「動的ネットワーク」を構成し、今いうところの「レジリエンス」を生きる「主体的自己」となります。このような「主体的自己」同士が集まって「人間集団」を形成する企業は、宇沢弘文氏の言う「社会的共通資本」であり、「社会の公器」でなければなりません。

図1:「主体的自己」が生きる「公共生活圏」

「生きるかたち」と「働くかたち」の間で「公共的英知」が創発します。それによって「マネジメントのあり方」は、従来型の上意下達の権威主義的関係から、従業員の当事者意識向上により、経営意思の共有がなされ、経営品質が向上する流れへと移行します。こうして「従業員」に焦点化されることによって実現するのが「能動的主体による全員参加型の経営」です。

「生きるかたち」「働くかたち」が変われば、それにつれて「国のかたち」が変わります。そこにおいて全体を主導するのは、「利他共生」の理念および「卓越性志向」の観念です。

国民に求められるのは「使命感」であり、それを支えるのは、「共感力」「実行力」「構想力」「反省力」の総合です。これによって「国のかたち」の基本的枠組みが定まります。国民ひとりひとりに、強い「信念」の持ち主であることが求められます。

要は、「状況を的確に読み取り」(アフォーダンス)、「自ら進んで状況を創出する」(アブダクション)能動的主体となれ、ということです。それには知性・感性・情動など心身の不断練成(アテンダンス)が欠かせません。

<質疑応答>

Q1:経営者として公共社会への関わりはどう考えれば良いか。会社があり、会社の顧客があり、競合会社がある。今回の講演ではマネジメントや経営が変わるということだったが、公共社会という概念で、顧客と調整を行い進む、あるいは競合他社と公共文化という概念で何ができるかを模索するという理解で良いか。

A1: 昔から日本の経営理念で「事業は人なり」「企業は社会の公器なり」という言葉がある。企業も人材も社会からの預かりものであり、宝であるという考え方だ。社会の公器たるべき企業として、人材をどのように活用するか。場合によっては、人材がより良い職場を求めて出ていくことも奨励すべきである。優秀な人材が独立し起業することは、経営者にとって誇ることである。そういう社会に変わるべきだ。こういった広い視野を経営者が持てば、お互いを尊敬しあえる世界に変化していくのではないか。結論として本件への回答は、原点に返る、ということになる。

Q2:使命感を支える4つの能力のうち「共感力」については、最近よく「エンパシー」という言葉を見かける。相手に「共感する気持ち」をさす「シンパシー」に対して、必ずしも共感・同意しなくても「相手の立場や考えを理解する能力」をエンパシーと呼ぶ。本講演の共感力は、シンパシーというよりエンパシーの方に近いと感じた。

A2: 相手の立場を考え理解する能力は非常に大切である。今後中心となる考え方である。ただ、エンパシーだけで良いかというとそれだけではなく、一歩踏み込むことが望ましい。「レジリエンス」という言葉をよく耳にするが、溌剌とした弾力のある交際の輪を広げていこうという言葉だ。このエンパシーとレジリエンスを両方持てれば素晴らしい事である。

Q3:多様性が大切にされるようになってきた。他者の痛み、感情、考え方を理解し、互いが認め合っていく社会に向けて共感力や認め合う力を、実生活を通して個人が身につけるにはどうすれば良いか。

A3: 一つの例として、自宅近くに姉が一人暮らしをしている。高齢であり、建物も大きい。これをどうするべきかをある建設会社に相談したところ、老後や相続税対策として2階建ての二世帯住宅を提案された。年齢や相続を考えた回答ではあるが、疑問を感じた。今までのマイペースな生活環境と真逆となる提案は、果たして良い提案だろうか。例えば、上下で住み分ける二世帯住宅よりも、小さくとも敷地内に住宅を二棟建てるほうが良いのではないか。コストは増えると思うが、相手の立場を考え重んじた案の提示が望ましい。職場の中で、柔軟で多面的な発想をする場面が有り得ると思う。

Q4:個人が主体的に動くことを求められる中、受動的になってしまう人もいる。能動的に動こうと思わせることが、マネジメントでも大切であると考えているが、他者を能動的に動かすための意識付けが非常に難しく、アドバイスが欲しい。

A4 :従業員10人程度の整備会社があり、業務に対する姿勢が2グループに別れていた。始業時間より前から業務環境を自発的に整えるグループと、始業直前に出社し言われたことのみ行うグループである。前者から公平性について声が上がったため早朝手当を適用したところ、社内が紛糾した。自発的な共感力、実行力、構想力という善き精神に対し感謝で返す文化を作るべきであった。皆で持ちつ持たれつ協力しあう環境を、マネジメントとして制度化を図ったりするのは、日本的文化、公共文化資本主義には合わないのではないかと思う。

Q5:日本文化の中に共生という考えは存在していたと、改めて気付かされた。利他主義も大切だ。本当の意味でのダイバーシティとは“共生”だと思っている。企業も社会も真の意味のダイバーシティを考えていかなければならない。能力、考え方を受け入れられる会社、社会を作っていかねばならない。

A5: 能力主義、成果主義というのは近代の思い上がりである。人間の本質を見据えた文化の資本主義があり得ると思っている。ありのまま、自分らしく生きていく、やわらぎのあるたおやかな社会というものが日本の文化的伝統である。経営者の方には理想の会社を作ってほしい。

以上
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