3月15日の夜、先週に続き六本木の路地裏にあるラウンジスペースBLINKで第7回CPDSフォーラムを開催しました。ゲストは都市計画家で多摩大学大学院客員教授の中分毅さん。「プロジェクト・マネジメントからプロジェクト・デザインへ」と題し、PMの役割の変化について2回にわたりお話し頂きます。
前編となる今回は、PMrのバイブルとされる「PMBOK」の変化についての話から。アメリカのPMIが発行するPMBOKは2021年の第7版で大幅に改定されました。第6版まで踏襲されてきたプロジェクトの5プロセスとマネジメントに関する10の知識領域のマトリクスを初めて崩し、「PMの12原理+成果の提供に関与する8領域」という構成に大幅な変更が加えられたのです。これによって第6版までの不十分な点はだいぶ改善されましたが、それでも幾つかの違和感が残ります。その一つは、プロジェクト・マネジメントの領域を限定的に捉えていて、プロジェクトの目的や目標は所与としている点です。
プロジェクトの失敗の主要な要因は、不適切なビジョン設定や要求事項のマネジメント。初動期における構想がしっかり練られていなければ、PMがどんなに奮闘しても良い成果は期待できないと指摘。①解決すべき課題、②課題が解決された状態=ビジョン、そして③ビジョン実現のための行動という3つの要素によって構成されるプロジェクトのフレームを創り上げること、すなわちプロジェクト・デザインが重要であるというお話でした。
取り上げた海外の事例は、最終消費財卸売り事業者によるweb-shop開設、高齢者向けの食事を提供する福祉事業改革や発展途上国の貧困に悩む酪農組合の状況改善など。建設プロジェクトではありませんが、課題を発見し、解決のビジョンを示し、そこに至るプロセスをデザインするというフレームは共通するものがあります。その中で、MBS(ミッション・ブレイクダウン・ストラクチャー)やDT(デザイン・シンキング)、SP(シナリオ・プランニング)といった概念を紹介して頂きました。
参加した方々からはタレントのアンミカ氏の通販番組における論法との共通点や、長期にわたる開発プロジェクトでビジョンを定め進めることの難しさ・共有のフレームの重要性など、ご自分の経験や進めているプロジェクトと絡めたご意見を頂きました。また、中分氏からは日本におけるCM導入黎明期のエピソードやCM資格の成り立ちなど、他では聞けないお話も伺うことができました。
参加者は10名、予定の時間を過ぎて熱い議論が繰り広げられました。中分さん、貴重なお話をありがとうございました。次回CPDSフォーラムは3月22日、中分さんの講義後編、同じ会場BLINKで主に国内の開発プロジェクト事例のお話しを伺う予定です。