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「建築設計における海外デザイン事務所との付き合い方」連載第3回

前回の記事では、このガイドラインで取り上げる建築・建設プロジェクトにおける海外デザイナーとの契約の在り方の中で、特に契約に関わる関係各社の定義(業務内容、責任範囲など)についてお話をしました。今回は契約におけるプロジェクト概要の設定についてお話します。

海外建築家やデザイナーを日本国内建築プロジェクトに招いて業務委託をする場合、プロジェクトの成り立ちについて「必要以上」と思われる程説明を尽くすことで、後々の誤解や問題を招かない様備えられます。欧米の建築家やデザイナーが海外で設計を請け負う場合、リードコンサルタントとして設計プロセス全般の統括のような立場でプロジェクトに参画することが多くあります。この場合、建築家は他の専門コンサルタントやエンジニアの業務を取り纏め、設計全体の進行に自らが請け負った業務に加えて、ある程度の責任を持ちます(PMとの協働で行うこともありますが)。その場合、建築家はプロジェクト全体に対する理解が必要となり、その理解無しには設計そのものも進められないと考えられます。またリードコンサルタントとして、専門外である技術的な内容についても一定の理解が必要となり、多くの専門コンサルタントから提案された技術的な設計提案を総合的に判断し、最終的な設計として事業者に進言するのが建築家の責務と捉えられ、それは全体の理解無しにはかないません。

この様な観点から、海外建築家/デザイナーがプロジェクトに参画する場合、出来るだけ細かくプロジェクトの内容とこれまでの事業の経緯を理解する事を求めてきます。それに対し国内プロジェクトで海外建築家/デザイナーを招く場合、限定的なデザイン作業を依頼するケースが多く見受けられます。多くの場合、外装のデザインとそれ以降のデザイン監修といった業務内容が多く、大部分の設計作業は日本側の設計者によって取り纏められる様です。これは例えて言うなら、フランスから有名シェフを招いて晩さん会を計画しながら、そのシェフには会の主旨や招かれたゲストについても何の説明も無しに、皿の盛り付けだけをお願いし、それ以外の調理には触れさせず、国内のシェフでそれ以外の作業を進めるようなものです。「どうせ日本人の舌の好みはフランス人にはわからないだろうから、こっちで味付けはやっておきます」とでも言いたげな。これはある種侮辱的でもあります。

建築は総合芸術でありながら、多次元に絡み合った社会的条件に向き合いながら理想的でありながら現実的な「解」を社会に提示する仕事です。建物の一部だけを切り抜いて、その部分だけ「デザイン」する行為は、建築とはかけ離れたものであると思います。プロジェクトが抱える様々な制約や条件を理解し、想像力のフィルターを通すことで建築表現という最適解(と思われる)を提案するのが建築の醍醐味で、その為にはできる限りプロジェクトの内容を理解する必要があります。プロジェクト概要では、そういった条件をできる限り提示する事で、建築家がより深い理解のもとに創作活動が出来る様準備することが出来ればと思います。

『建築設計における海外デザイン事務所との付き合い方』

~業務契約締結に向けてのガイドライン~は、こちらをご覧ください。

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