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連載 第6回『現代の建築プロジェクト・マネジメント』を概観する

前回に引き続き、書籍『現代の建築プロジェクト・マネジメント-複雑化する課題を読み解く-』の要点や背景にある著者の意図などを紹介させて頂きます。今回は建築プロジェクトにおける透明性や実費精算(コストプラスフィー)契約をテーマにした、第5章の概要を紹介します。(小菅 健)

● 透明性とは何か
建築プロジェクト運営における透明性という言葉には、「プロセスの透明性」と「コストの透明性」の大きく二つの意味合いがあります。プロセスの透明性は、計画内容や採用技術、設計者や施工者の選定理由等の過程をステークホルダーに開示し、アカウンタビリティを向上させることが目的です。納税者への説明責任が求められる公共工事では、民間工事以上にこのプロセスの透明性が求められます。
一方でコストの透明性を求める場合は、プライスではなくコスト、つまり調達価格等の原価をゼネコンが明らかにしたうえで、適正な費用で建設工事が推進していることを発注者に証明する必要が生じます。ゼネコンは、従来の総価請負では開示する必要がなかった工事の原価を開示することになるため、今までのビジネスの仕方から大きく意識を変えないといけません。一方で、原価を開示しコストを透明化することは、発注者・受注者間の情報の非対称性に起因した不信感を解消し、両者が同じベクトルを向いたプロジェクトチームを形成する契機となる可能性も持っています。

● 実費精算(コストプラスフィー)契約
このコストの透明性を高めるために有効な支払い方式の一つが、実費精算契約です。実費精算契約では、ゼネコンはコストにあたる専門業者との契約金額・支払金額を発注者にオープンにし、このコストに最初に取り決めた率または額のフィー(一般管理費・利益)を加えた金額が、請負金額となります。
コストについて、要した原価がそのまま発注者から受注者に支払われるケースもありますが、それではゼネコンが原価低減に努めるモチベーションが希薄になるため、ターゲットコストを設定し、そこから減または増となった場合の差額を発注者とゼネコンで応分するインセンティブ/ペナルティの仕組みを設定するケースも多く見られます。また、原価の正当性を示す証拠書類として何を準備するかも事前に取り決めておく必要があり、この運用ルールの設定は、期中の事務手間の量に大きく影響します。つまり実費精算契約のやり方は一つではなく、求める透明性に応じて、プロジェクト毎に発注者とゼネコンでルールを協議し決定する必要があります(本書では、ルールづくりのポイントや留意点を解説しています)。

● 発注者支援型CM方式
ちなみに、昨今急速にPMやCMを参画させるプロジェクトが増えてきている背景には、発注者内部技術者の質的・量的補完のほかに、第三者としてプロジェクトを技術的に中立な立場から確認・調整して貰うことで透明性・説明性を担保するという意図も含まれています。例えば、施工者の入札選定段階でCMが要項書作成や評価に加わることで説明性を高める、実費精算契約の証拠書類の確認プロセスに第三者の目を加えることで透明性を担保する、という具合です。2020年9月に国土交通省から「地方公共団体におけるピュア型CM方式活用ガイドライン」が公表され、CMの業務内容や業務分担、業務報酬の積算の考え方、参加要件や選定方法、CM業務委託契約約款(案)が提示されたことにより、公共工事でのCM活用は今後より一層拡大していくものと思われます。本書の中では、公共と民間におけるCMの位置付けの違いや、工事監理とCMの違いについても解説しています。

次回は、第6章を紹介します。(つづく)

* 書籍の紹介ページはこちら(CPDSウェブサイト)
https://cpds-c.jp/archives/news/news43

 

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