今年度2回目のフォーラムゲストは、インフロニア・ホールディングス株式会社CEOの岐部一誠さん。大変ご多忙の中、時間を割いてご登壇頂きました。前田建設工業に入社し、土木工事の施工管理からキャリアをスタートした岐部さん。我が国のスクラップ&ビルドがこのままでよいのか疑問に思い始めた頃に経営企画部門に異動、現在に至ります。
2011年、前田建設工業は建設業界では異色の「脱請負宣言」を行いました。工事受注をゴールにしない経営戦略でPPP/PFIや再生可能エネルギー等に事業の多角化を進めます。2021年10月にはグループのホールディング会社であるインフロニアが設立され、代表に就任しました。
1980年代、イギリスの建設業事業者が日本の建設業界を視察しました。当時の団長は世界的なエンジニアリング会社アラップの社長。日本で行われていたダンゴウは自国のカルテルとはどうも違うと彼は気づきます。工期・予算・品質を守りしかも薄利。自国に持ち帰ってパートナリング方式を開発しました。
日本の技術は海外ではオーバースペックと評価されると指摘します。プロダクトアウト的な発想が抜けきらないとも。英国・米国を視察して建設業関係者にヒアリングを行い、コスト+フィー、オープンブックの契約方式を学びます。海外では日本で今も主流である総価請負契約は受注者のリスクが大きいと捉えられている。岐部さんは英米での経験を基に日本版の「原価開示方式」を開発します。
2005年から民間工事から原価開示方式のチャレンジを始めました。経営企画部自らが営業に回ったそうです。2011年、3.11発生の直後に国交省にコスト+フィーのCM方式導入を提案。三陸沿岸部における東日本大震災復興事業ではその提案が採用され、復興は円滑に進められました。
コスト+フィーのキモは正直=オネストに対応すること。信用が第一。実は日本人に向いている契約方式だと岐部さんは言います。現在のような市況では、手間のかかる原価開示方式を進んで採用する事業者は多くありませんが、市場は必ず上下に変動します。物価が下がる局面でオネストに対応したかどうかが重要、それ次第でチャンスが来ると、岐部さんは力説しました。
講演頂いた岐部さん、参加頂いた皆さん、ありがとうございました。次回のCPDSフォーラムは年明け2月、内科医で経済学者・宇沢弘文氏の長女・占部まり氏をお招きして「社会的共通資本」についてお話を伺う予定です。CPDS会員の皆様、ぜひご参加ください。
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インフロニアCEO 岐部一誠氏

会場の様子。これまで一番の盛況でした。