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◆連載第7回「官民連携委員会_PPP/PFIについて」

今回は第7回目の連載となります。第3回目の連載でも少し触れましたが、今回は官民のリスク分担について詳しく触れていきます。

PPP/PFI事業では、事業を開始する前に、リスクの発生確率とその影響を評価する必要があります。そして、リスクが顕在化した場合には、官民のどちらがそのリスクを負担するかが重要な論点となります。

リスク分担を考慮する基本原則は、「リスクを最もよく管理できる者がリスクを分担する」という考え方です。ただし、民間事業者が管理することが難しいリスクまで求められると、民間事業者の参入意欲が減退し、官側に提示する条件が悪化し、最適なVFM(Value For Money)の実現が困難となります。

また、官民双方に帰責事由がないリスクの分担方法も論点となります。具体的には、以下のようなリスクが論点となる典型例となります。

  1. 「不可抗力リスク」:内閣府の公表する契約に関するガイドラインによれば、「不可抗力は、管理者等及び選定事業者のいずれの責にも帰せない天災等、具体的には暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、落雷、地震、火災、有毒ガスの発生等の自然災害や、騒乱、暴動、戦争、テロ行為等の人為災害が含まれる。また、疫病や感染症等、これら以外の事由も不可抗力事由に含まれる。」と記載されています。これらは、保険によるリスク軽減措置が容易な自然災害と、保険による対応が難しい戦争などがあり、リスクの捉え方が異なることもあるため、定義を検討する際には注意が必要です。
  2. 「物価変動リスク」:近年、物価の高騰が続いており、そのリスクをどう分担するかが重要な論点となります。物価変動の対象となる民間事業者の費用は、設計建設段階のイニシャルコストと運営維持管理期間のランニングコストに分けられます。これらのコストをさらに詳細に分け、それぞれに対して指標や変動の基準日を定めますが、その指標や基準日が事業を行う上で適切かどうかが公共と民間事業者の論点となります。昨今の物価高騰は激しく、民間事業者への負担も大きくなっています。そのため、民間事業者から協議の申し出があった場合には真剣に対応するよう、内閣府から通知が発行されています。
  3. 「法令改正リスク」:法令改正リスクは、事業開始時に予期できなかった法令等の変更により事業の継続が困難となり、損失が発生するリスクです。法律、命令・告示、条例、規則・規程の制定や改廃だけでなく、行政機関が定める審査基準、処分基準、都市計画等の決定や廃止も含まれます。典型的なリスクは、法令改正に対応するための施設の改修費や運営費用の増加といった経済的損失です。内閣府の公表する契約ガイドラインでは「当該選定事業に直接関係する法令をあらかじめ特定し、これら法令の変更による増加費用は管理者等の負担とし、あらかじめ特定された法令以外の広く民間企業一般に影響を与える法令の変更による増加費用は選定事業者の負担とすることが通例である」と記載されています。しかし、PPP/PFI事業は通常の民間事業とは異なり、事業者は自身の判断のみで事業からの撤退を選択できないため、一般に適用される法令であってもそのリスクの一部または全部を公共側が負担することも検討すべきです。このような趣旨の記載も契約ガイドラインに見られます。

これらのリスクは公共と民間との間で論点となりやすいものの例ですが、個別案件ごとの特性や外部環境の変化を充分に考慮し、前例を踏まえながらより相応しいリスク分担を探ってゆく必要があります。

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