一般社団法人建設プロジェクト運営方式協議会・一般社団法人PPP推進支援機構との共催で、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授を基調講演に迎えたオンライン国際シンポジウムを開催しました。パネルディスカッションには、石井菜穂子(東京大学教授・前世界銀行地球環境ファシリティCEO)・隈研吾(建築家)・山口周(著述家)の各氏が登壇し、コロナ禍で顕在化した社会の分断を乗り越えるために必要なこと、それぞれが描く共生未来について語り合いました。
尚、当日は接続トラブルが発生し、多くの方が視聴できずご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びします。お申込み頂いた3,300名の方には、アーカイブ配信をご案内させて頂いております。
<基調講演>
サンデル教授はまず、我々の市民社会の課題について、共通善の共有地をいかに広げるか、倫理的な絆を取り戻すことができるかといったポイントを挙げました。分断と不平等の原因のひとつは行き過ぎた新自由主義経済であるとし、「株主価値の極大化」には同意できない、日本の伝統的な「三方良し」の方がより健全な考え方であると述べました。
次に、分断拡大の経緯として、能力主義的成功という考え方の拡大を挙げました。成功は自分の能力に対する評価であり、勝者がそれに値する成果であるという考え方が一因との指摘です。米国のトップ大学では、所得水準上位1%の家庭の学生数が下位50%の学生よりも多いとのこと。殆どの社会で、高い学歴は少数派であることが忘れられていると指摘しました。
では、どうすればよいのでしょうか。教授は能力主義的成功を問い直すこと、労働の価値の尊重を提案します。コロナで在宅可能な仕事と現場仕事の間で格差が拡大しましたが、これはエッセンシャルワークの大切さに気づくチャンスでもあると強調します。成功の意味に関しては、たまたま運が良かったからと謙虚に考えるべきであり、それが社会の分断と亀裂の克服に寄与すると訴えました。
サンデル教授の基調講演を受け、分断を乗り越えるために必要なことについて話し合いました。
石井先生は地球環境問題と社会の分断が人類の二大危機だと指摘し、我々人間が経済社会の在り方を変えていかなければならない段階だと述べました。建築家の隈先生は、NYに代表される20世紀型・集中型の都市では超高層ビルが富裕層、低層建物が貧困層を象徴すると指摘、一方で、江戸時代の木造低層都市モデルを再評価すべきと主張しました。山口氏は与えられた才能を謙虚に受け止めるべきであり、能力主義で格差が拡大した今、社会の上層部の人も決して幸福ではないと指摘しました。サンデル教授は3人の発言を踏まえ、共通するテーマは自分の支配者であることを止めること、その源泉は “謙虚さ” であるとまとめました。
後半ではそれぞれが描く共生未来を語り合いました。石井先生は重要なのはコミュニティへの帰属意識であり、これからの気候変動対策は都市がリードするとコメント。隈先生はサンデル氏が指摘した公園の役割が重要であるとし、都市における道路空間の有効活用がポイントと述べました。山口氏はシステムを変えても人間が変わらなければ何も変わらない、21世紀を暗黒の時代でなく人間性回復の時代にできるかどうかは我々次第と指摘しました。
最後にサンデル教授は、大リーグでMVPを受賞した大谷選手の謙虚な姿勢を称えました。その上で、会場からの質問を踏まえ公の議論の場づくり、議論の機会の提供が重要だと強調しました。モデレーターの植村理事が議論を受けて、ダイバーシティ実現のために、多様な人々が集まる場を作り、議論する機会を生み出すことが本当の意味でのスマートシティだとまとめました。
お申込みを頂いた皆様、ご協賛を頂いた会員企業の皆様、誠にありがとうございました。